京都地方裁判所 昭和30年(ヨ)45号 決定 1955年2月28日
申請人 任天堂骨牌株式会社
被申請人 任天堂骨牌労働組合
主文
別紙目録記載の建物に対する被申請組合の占有を解いて申請人会社の委任する京都地方裁判所執行吏をして占有させる。右執行吏は京都弁護士会所属弁護士田中義男(以下管理人と略称する)に右建物を管理させなければならない。
管理人は申請人会社の請求あるときは、右建物をその事務室として使用することを許さなければならない。又、被申請人組合より理由を明示して請求があり、管理人に於て右請求を相当と認めた場合は、同組合に一週間三回以内一回二時間以内宛を限り右建物に出入することを許すことが出来る。
申請人会社及び被申請組合は右建物の使用及び出入に付一切管理人の提示した条件及び指図に従わなければならない。管理人は右指図を実効あるようにする為執行吏の立会を求めることができる。
執行吏は右建物がその占有にかゝることを適当な方法を以て公示しなければならない。
(注、保証金十万円)
(裁判官 箕田正一 加藤孝之 鈴木辰行)
(目録省略)
【参考資料】
仮処分命令申請
申請人 任天堂骨牌株式会社
被申請人 任天堂骨牌労働組合
妨害排除立入禁止等仮処分申請事件
申請の趣旨
一、別紙物件目録(添付図面に示す)記載の建物及びその敷地に対する申請会社の占有並びに被申請組合の占有を解いてこれを申請会社の委任する京都地方裁判所執行吏の保管に移す。
二、執行吏は申請人会社の請求あるときは右保管に係る物件を申請会社の指名する者に使用せしめ営業せしめることを認めるものとする。
被申請組合は執行吏の許可なく右物件内に立入る等の行為に依り申請会社の右業務を妨害してはならない。
三、被申請組合は申請会社の重役その代理人被申請組合以外の申請会社従業員申請会社の顧客取引先等の第三者が右物件内に出入することを妨害してはならない。
四、執行吏は以上の趣旨の実効を期すため適当なる措置を講ずることが出来る。
申請の理由
一、申請会社は肩書地を本店とし同市東山区福稲上高松町別紙物件目録に示す場所に製造所を設置しその業務の内容は骨牌類の製造販売であつて従業員百八十七名を使用し来つたものであり被申請組合は前示従業員中百二十九名の従業員に依つて昭和二十九年十一月二五日結成し任天堂骨牌労働組合でありその組合長は生田義一であり爾来同組合を代表し来つたものである。
二、申請会社としては企業の合理化を計り過剰人員の整理を断行しない限り将来到底事業経営を維持し難い状況にあるので之を実行し企業の合理化を計るべく昭和三十年一月十四日右組合側に対し該合理化案を説明し周到綿密な計画に基き可及的最少限度の過剰人員である六十二名解雇の旨を発表するに至つた処被申請組合は申請会社の前示申入の企業合理化の実態を毫も理解することなく徒らに解雇絶対反対のみを強硬に主張して右申入を拒否し翌十五日より被申請組合は全員を叫合し申請会社工場事務所内に侵入之を占拠し団体の威力を誇示し不法にも申請会社の守衛及び被申請組合外従業員をして団体的威力を藉り暴力を用いて同人等を強引に退去せしめる実力行使を敢てし被申請組合は之を占拠し同月十九日同事務所の入口に斗争本部と大書したビラを貼り数十名の組合員が同所内部を占拠するの状態を現出したのである。
三、依つて申請会社は事態の悪化を極力避け出来得れば平穏裡に被申請組合との団交に依つてその解決を計るべく誠意を披瀝して同月十五、十七、十八、二十日の四回に亘る団体交渉を申入れその団体交渉にあらゆる努力を続け来つたのであるが被申請組合は依然同様の態度を持して譲らず被申請組合は同月二十四日京都府地方労働委員会に対し申請会社の解雇の前面的徹回及び自主的断行をその申出趣旨とした斡旋を申請するに至つたので申請会社は右提訴に応じ翌二十五日より二月五日迄屡次に亘つて同委員会に依つて之が斡旋が行われたのであるが被申請組合側は単に解雇の全面的徹回を固持するのみで徒らに対じして譲らず為に該斡旋は遂に不成立に帰したのである而して申請会社は前述の如く被申請組合との団体交渉に於て最早交渉の余地なきものと認め一月二十二日付を以て従業員六十二名(その内組合員は五十二名)を指名解雇することに決し同日内容証明郵便を以てその旨解雇者全員に通知したのである。
而して前記状況に鑑み申請会社は業務の持続不可能とし一月十八日事業場は之を閉鎖したのである。
四、以上の如く二月五日団体交渉決裂地労委の斡旋又不成立に至つたところ被申請組合より申請会社に対し更らに引続き実力行使を強行するの決意を通告し遂に本格的争議段階に突入するに至つたのである依つて申請会社は翌七日右被申請組合のみに対する作業場の閉鎖並びに速かに退去する様書面を以て正式に通告したに不拘依然不法占拠を解かないのみならず申請会社が被申請外従業員に対し就労を命じ同日午前九時申請会社重役課長等は組合外従業員が右工場に入らんとするや被申請組合員は挙げてその入場を阻止し剰さえ暴力を用い一歩も入場せしめない右事情を示せば既に被申請組合占拠にかかる同事務所の入口には多数の者に棒を持たせ強いて入場せんとせば該棒を以て殴打の気勢を示し怒号威嚇強迫の限りを尽し重役課長組合外従業員を促えては之を押倒す等の暴状正に眼を覆うと云うも過言ではない(当日所轄松原署長は一個小隊を卒いて待機)右様の次第で申請会社としては組合外従業員等に依る作業の再開は不可能に帰するに至つたのである。
要するに被申請組合は不法な実力行使をその戦法とし同組合予ての決議に基き被申請組合員は別紙物件目録記載の建物敷地の一部(事務所)を占拠し申請会社の右物件の占有を侵奪し他物件に付いてもその占有を妨害し申請会社の重役その代理人被申請組合外の申請会社従業員申請会社の顧客取引先等の第三者の入所は全く不可能に陥つたのである。
如斯実情であつてそれ迄申請会社は被申請組合に対し退去方数回に亘つて求めたのであつたが頑強に抵抗するのみで法的救済の外はない結言すれば被申請組合敍述の行動は全く正当な争議行為を逸脱すると共に申請会社としては被申請外従業員に依り一部操業を開始し得る状態にあるに不拘それをも不可能ならしめて会社の経営権を破壊し申請会社の別紙目録物件に対する所有権の侵害並びに占有権の侵奪乃至妨害しているのでかかる状態が継続するに於ては申請会社は著しく損害を蒙ること必然であり且つ前示の如き著しい法秩序の破壊状態を本案判決迄持続せしむることは許されないので申請会社は被申請組合に対し建物引渡占有妨害排除業務妨害禁止の本訴を準備中であるが緊急の事態に迫られ茲に本申請に及んだ次第である。
疏明方法(省略)
附属書類(省略)
昭和三十年二月九日
申請代理人 三木今二 外一名
京都地方裁判所 御中
(目録省略)